土曜日

彼は考えていた。

さてどうする?


彼はせっかくバイトが早く終わったことでできた時間を無駄にはしたくなかった。


して、無駄とはなんだろうか?


ここでたまりに溜まっているレポートを片付けることは無駄であろうか?

確かにそれは彼が自ら望むものとは相反するものだった。


では、ここで今までほしかったものを一気に買いに行くべきか?

それはそう、言葉通り彼の望むものだ。



しかし彼はレポートをやる。


そう、彼はニホンジンなのだ。

金曜日

彼は考えていた。

ここはどこだ?


いやわかりきっていた。


ここはニホンのサイゼリアである。

しかし彼の目の前にある光景が自分の現在地を錯覚させるのである。


金曜日は彼の所属しているサークルの活動日だった。

といってもご飯を食べに行って話し合いするだけなわけだが……


彼のサークルは流行のグローバル化なるものを取り入れようとしていた。


ここまでは良いといえる。

言うなれば行き過ぎたのだ。


彼は今日、3人のニホンジンと7人のガイコクジンと呼ばれる人たちと食事をしていた。


それぞれ様々な国から来ており、彼がそれをすべて把握するのは不可能に近かった。


しかし彼は単純に感じていた。

楽しい。


そして、一瞬頭をよぎったニホンジンといるよりよっぽど楽しいかもしれない。という感覚を必死でなぎ払った。

木曜日

彼は考えていた。

少しはマシになったな。

彼は目の前の設計図を蛍光灯に透かすようにして見て、そう思った。


目の前の、まだ二次元でしかない紙飛行機はそれでもすでに飛びそうな気がした。

機体を軽くし、尾翼もつけた。


完璧だ。


彼は得意のあやしげな笑みを浮かべた。

火曜日

彼は考えていた。


いや嘘だ。彼は考えていなかった。

考えもせずに画面を見つつひたすら鉄の円環を叩き続け音を聞いていた。


その音は教会の鐘の音のようであり、境界に立った時の心音のようであった。


そして望む波形がでるまで彼は心音を鳴らし続けるのだ。

月曜日

彼は考えていた。

なぜ俺が?と


彼は今日バイト先で賞状をもらった。

賞状なんて前にいつもらったか忘れてしまっていたくらいだったので、彼はただぽかんとしていた。


賞状にはこう書かれていた。

「接客部門店内優勝」

どうやらこれは、ここんとこ行われていたバイトを店長が審査し、料理と接客で1位を決めるなんとかコンテストとかいうヤツの賞状らしかった。

彼は俺よりいいヤツなんていっぱいいると思っていたので、正直気にしていなかったが、この賞状によると彼が接客部門で1位になったらしい。


彼はもう1度思った。

なんで俺が?

日曜日

彼は考えていた。

何か言わなくてはいけないことがある気がする。


誰かに何か


大切なことを……


彼は悩んでいた。


しかしいくら考えても答えは出てこないのだ。


なんだろう?わからない


まっいっか。

彼は眠りについた。
HAPPY BIRTHDAY