彼は考えていた。
果たしてこの国道の長い長い大行列の中で俺ほど急いでいるやつがどれほどいるだろうか?
いや……
彼は誰に見られるでもないのに、人にわざわざ不快感を与えるようなニヤリとした笑みを浮かべた。
そう、実際この中には俺より急いでいるヤツなんてたくさんいるのだ。
むしろ過半数より多いかも知れない。
彼は知っていた。
ちっぽけなことを。
そして笑った。
国道の上にある、この状況では何の意味もなさないカメラに向かって。
ニヤリ。
そして彼は走り出す。
今終わったばかりのミスチルの「ゆりかごのある丘から」をもう一度流して。