火曜日

彼は考えていた。

これをしている間に果たして何人の世界中の人を救えるだろうか。



愚問だ。



これをしていなくたって、俺は一人もいや一匹も救うことなどしないだろう。(いやあるいは蚊一匹ぐらいはわからないが)


とにかく目の前の単純作業は彼に退屈と憂鬱を与えた。

この日彼は昼過ぎからひたすら鉄棒を磨いていた。


鉄棒といってもあの校庭にひっそりとそれでいて存在感を出そうと立っているアレではなく、文字通り鉄の棒だった。


昼過ぎから磨き始め、彼の使ってる紙やすりの目の粗さはすでに粗悪な紙のそれと区別がつかない程度まで達していたが、それでもまだ彼は磨き続けた。


隣の友人を見ると断面を必死に観察している。


わからないな。


彼は思った。

すでに鏡と区別がつかないほど磨かれたこれをさらにどうしようというのだ?



わからないな。


そういいつつも彼は手を動かし始める。