耳鳴り、残像
実験自体はひずみゲージを用いた簡単なひずみの測定でした。
が、実験室が最悪でした。
その研究室は材料の研究をしているのですが、なんでか知らないですが、超音波や音波の研究っぽいことを同時にやっているらしく、実験中に時折でっかいスピーカーから頭のなかを掻き毟られるような高音の「キーーーーン」という音が発せられるのでした。
それはそれは実に耐え難いものでした。ここまで不快にできる音があるとは……徹夜に近い体にはこたえました。
しかも研究生はなかなかデータが取れないのか、かなりの時間音を流し続けていました。かなり困ったものです。
やめろ
やめろ
やめろ
心の中でつぶやきました。
気づくと雨が降っていました。
冷たい冷たい大粒の雨でした。
仕方がないので僕らは傘を買いました。
小さい小さい傘でした。
店から出ると雨がやんでいました。
冷たい冷たい風が吹いていました。
仕方がないので僕は自転車をこぎました。
いっぱいいっぱいこぎました。
内側の雨と外側の風が混ざってなんだか甘くなっていました。